2013年2月19日火曜日

安倍首相訪米前に「参加表明Xデー」の懸念再び―あわてず、しかし情勢をしっかり見極めよう


 安倍首相の訪米が3日後に迫った。

 オバマ大統領との会談は222日の予定だが、いずれにしても政府、与野党国会議員のTPP参加に向けての攻防も激化している。

TPP推進・超党派議連をけん引する3人
 自民党内推進派の動きについては、すでに前回ブログでも述べたが、川口順子元外相と中村博彦元総務政務官がけん引して、自民党内でTPP交渉参加を推進する集団の組織化が行なわれている。213日に行なわれた勉強会には、小泉進次郎ら含む約30人の自民党議員が参加した。また、推進の動きは野党にも広がっている。218日、「TPP推進の超党派議連設立」というニュースが飛び込んできた。民主党と日本維新の会、みんなの党の有志議員がTPP交渉参加を求める超党派議員連盟の設立を計画しているという。民主党といえば、最終的に「新自由主義まっしぐら」の政党となった。TPP推進もこの路線をさらに突き進むという意味では驚きもしないが、やはり本質はネオリベ政党である日本維新、みんなの党とあからさまに組む、という意味では末期的症状といっていい。この議連は、野党各党議員に参加を呼びかけるが、みんなの党の浅尾慶一郎政調会長が主導し、民主党の枝野幸男前経済産業相や日本維新国会議員団の中田宏政調会長代理らも呼び掛け人となっている。もちろん、民主党内には篠原孝議員や大河原雅子議員など、これまでも強くTPP反対を訴え、市民とも共闘してきた勢力もわずかながら残っている。しかしこれらの声を無視して、党として「TPP参加推進」を突っ走る民主党は、民意を反映してもいなければ党の体をなしていない。

 そして今回も、マスメディアがまたしても一斉に「訪米時に参加表明を」と書き立て、「参加への拒否感を薄めよう」と躍起になっている。朝日、毎日と訪米前のタイミングで続けて「決断のとき」「参加表明を」「参加決断しても首相は自民党内の調整可能」などと書く。参加するかしないか、はあくまでも「ムード」「やれる感じ」「勝てる直観」という感覚的なレベルの視点からのみ語られ、TPP参加の際のデメリットについての数値や根拠は紹介されない。まさに自民党が先の選挙で「大勝」した際に使った「しっかりした感じ」がまたしてもつくられ空気のようにばらまかれているのだ。

 私は、菅直人首相(当時)がTPPという言葉を初めて開陳した201010月時点でのマスメディアの状況をはっきりと思い出す。誰もその言葉を知らず、本質的な意味もカヴァーする領域の広さについても認識しないまま、「平成の開国」「アジアの成長を取り込む」という呪文ばかりをマスメディアは書き、一気にTPP参加ムードが醸成された。あのときと今回もまったく同じである。

 客観的には、状況は変わっている。

 まずは2010年秋時点よりも、TPPの持つ危険性、その意味について多くの人が理解をした。NAFTAの事例、韓米FTAなど海外の経験から学ぶことや、地域での数々の学習会、各専門分野の運動体が学び情報を持ち寄ったことで、その蓄積は圧倒的に豊かなものとなった。逆に、推進している側の根拠は当時とさほど変わらず、「国益」「経済成長」という抽象的な言葉が躍るばかりで、いったい誰の、何のメリットなのか、という点について詳細な情報公開もないままだ。

 全国の自治体の約8割が、TPP反対(もしくは慎重)の決議を次々とあげた。現在の国会の構成でみても、自民党議員(衆参合わせて)の過半数は反対の意思表示をしている。そして反対運動も、農業団体、医療、労働、環境、などのテーマに広がり大きな存在感も出すまでにいたった。さらにいえば、それでも国民の多くは「わからない」という感覚を持っているといえる。

 こうした根拠から考えても、このタイミングで「参加表明」に舵を切ることは、民主主義への冒涜に他ならないし、もっとアホな言い方をすればまさに、単に、「空気読んでねーなー」ということになる。

 しかし問題は、政府は確かに「誰かの、どこかの、空気を読んでいる」ということだ。財界、米国、その他その他の利害関係者である。マスメディアはそれらの配下に成り下がっているだけの話で、物事は実は超シンプルでもある。

 私自身は、実は、訪米直後のタイミングでの「参加表明」の可能性はそれなりに高いのではないか、と感じている。いまは情報分析やまさかの時の運動としての対応を少しずつ思い描かざるを得ない。もちろん「参院選まではTPP参加表明はできない」という縛りが自民党政権にはかけられてはいるが、何にせよそれまで100%参加表明はないという根拠はない。こうした時期だからこそ、マスメディアの報道に一喜一憂せずに、冷静に、しかし周到に、できる限りのことをして食い止めなければいけないと強く思う。

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